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内藤頼博「教訓二題」（『ふかみどり』第二十八号（常磐会、平成二年十二月）9～10頁）
北白川永久王殿下は、私が初等科にいた時、二年下のクラスにおいでになりました。かけっこが早くて、いつも運動会の花形でいらっしゃいました。大正の初め頃のことです。
その永久王殿下は、やがて陸軍幼年学校に御入学になり、陸軍士官学校にお進みになりました。その当時のお話です。
ある朝のこと、その日は行軍が予定されていました。殿下は、行軍中に用を足したくなると困るとお思いになって、朝から水を飲まないでお出かけになろうとしました。そのことを聞かれるや、母宮君の房子内親王殿下は、直ちにコップに一パイ、なみなみと水を注いで永久王殿下の前に差し出されました。「さァ、これを全部飲んでからお出かけなさい。行軍中に用を足さないですめば、あなたは楽でいいでしょうが他の兵隊さんたちはどうなるのですか。あなただけが楽をしていい筈はありません。さァ、ここでこれを全部お飲みなさい」と、のっぴきならぬ母宮君のお言葉。そのお言葉に、永久王殿下も抗うすべもなく、コップの水を飲みほしてお出かけになったということです。
･････
私は、この房子内親王殿下のお話 ･････ に、いつも心を打たれます。
内親王様のことは、いつも山辺知行先生が感激をこめてお話しになります。山辺先生は染織の権威で、父君は北白川宮家の宮務官をお勤めになりました。
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有馬頼義「二人の女官長」（有馬頼義『原点』（毎日新聞社、昭和四十五年（一九七〇）四月）所收）一〇六頁
北白川家が、戦後ジャーナリズムをにぎわせたのは、皇太子妃候補に、祥子さんの子肇子さんが擬せられたときと、成久王妃であった房子さん（旧内親王）が、伊勢神宮の宮司【ママ】になったときの二度であった。一時、皇太子妃は肇子さんが本命であり、それがきまったらということで、僕は各新聞社に予定原稿を頼まれていた。結果は美智子さんにきまったが、もしあのとき肇子さんにきまっていたら、僕はさらに皇室に近づかなければならなかった。その場合、おそらく皇太子妃の一族に、やくざな小説家がいてはすこぶる具合が悪くなっていただろうと思う。
ちょっとわき道にそれるが、皇太子妃がきまったとき、北白川房子さんが、大変意地悪い目をしていたと、当時の小説や記事に出ていた。しかし、房子さんを知っている者として、僕は房子さんが、そういう人でないことをよく知っている。
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伊勢神宮の“新舞樂”「榮久舞」は、平成五年（一九九三）の神宮式年遷宮を奉祝し、北白川房子神宮祭主の和歌に、東儀文隆が作曲し、薗廣晴が振付をしたもの。
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東京大神宮の「豐壽舞（とよほぎのまい）」は、北白川房子神宮祭主の和歌に作曲・振付をしたもの。
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