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森林太郎『能久親王事蹟』明治二十八年十月十八日
・・・・・ 宮は此日午前三時惡寒、腰痛を覺えさせ給ひしかど、七時病を力めて嘉義を發せさせ給ひ、午後一時二十分大茄苳に至らせ給ふ。此時達診しまつるに、後頭重、口渇、全身倦怠などおはしましき。一時三十分體温三十八度、四 脉八十一至おはしき。鹽酸規尼涅を上りぬ。・・・・・
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森林太郎『能久親王事蹟』明治二十八年十月十九日
・・・・・ 宮は朝安溪寮にいますを、達診しまつりぬ。體温三十八度、一 脉八十至、全身倦怠稍加はらせ給ふ。脾の少しく肥大せるを認めつ。午前六時出で立たせ給ふとき、御馬に乘らせ給ふべくもあらねば、轎に宮を載せ參らせつ。・・・・・ 午後五時宮古旗後に着かせ給ふ。御服藥は前方を服せさせ給ふ。・・・・・
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森林太郎『能久親王事蹟』明治二十八年十月二十日
・・・・・ 宮は朝體温三十八度、五 脈九十二至にして、食思振はせ給はざりき。轎に乘りて古旗後を立たせ給ひ、午後四時半灣裡に至らせ給ひ、五時半某の民家に宿りましぬ。夕の體温三十九度、八 脈九十二至なりき。ANTIFEBRIN(【傍】アンチフエブリン)を服せさせ給ふ。半夜下痢の爲めに次硝酸蒼鉛を上る。・・・・・
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森林太郎『能久親王事蹟』明治二十八年十月二十一日
・・・・・ 宮は朝の體温三十九度、五 脈百至おはしき。著く疲れさせ給ふと見えさせ給ひしかば、轎に載せまゐらすべきにあらずとて、竹四本を結びて長方形になし、これに竹蓆を張り、藁を敷き、毛布を展べ、上に竹を架して淺葱色の木綿布を覆ひて、日を遮るやうに補理(【振假名】しつら)ひ、これに載せまつりて土人に舁かせ、午前七時灣裡を立ちぬ。午後三時大目降に着かせ給ふ。夕の體温四十度、一 脈百零一至。倦怠愈甚しきを覺えさせ給ふ。規尼涅、赤葡萄酒、里謨那底を上りぬ。夜下痢せさせ給ふ。・・・・・
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森林太郎『能久親王事蹟』明治二十八年十月二十二日
・・・・・ 宮は朝の體温三十九度、六 脈八十至おはしき、午前七時三十分舁かれて大目降を發せさせ給ひ、午後五時三十分臺南に着かせ給ふ。夕の體温四十度、二 脈百零一至おはしき。赤葡萄酒、里謨那底を上りぬ。此夜より徹夜して看病せしむ。
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森林太郎『能久親王事蹟』明治二十八年十月二十三日
朝の體温三十九度、二 脈百二十至おはしき。・・・・・ 午後三時諸症稍増惡せさせ給ふ。・・・・・ 夕の體温三十九度、九 脈百二十至おはしき。軟便を下させ給ふこと三度、次硝酸蒼鉛、龍腦、赤葡萄酒、里謨那底を上る。夜譫語せさせ給ふ。此日より客に逢はせ給はず。貞愛親王に逢はせ給ひしを終として、次いで至れる高島軍司令官は空しく歸りぬ。
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森林太郎『能久親王事蹟』明治二十八年十月二十四日
朝の體温三十九度、零 脈百十至呼吸三十、夕の體温三十九度、三 脈百十九至呼吸三十三。口渇せさせ給ひて、舌に褐色の苔あり。右肩胛下隅の下に濁音ありて、兩胸の呼吸音〓【鹿鹿鹿】雜に、右胸に水泡音を聞く。こは肺炎の徴なり。尿量六百立方珊米にして、蛋白の痕迹あり。實岐答利斯、吐根の浸劑、龍腦、赤葡萄酒、牛乳を上る。
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森林太郎『能久親王事蹟』明治二十八年十月二十五日
朝の體温三十八度、五 脈百零四至呼吸三十、夕の體温三十八度、零 脈軟細にして百二十至呼吸三十。便秘せさせ給ふ。右肩胛下隅の下に捻髪音を聞く。時時應答不明におはしき。
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森林太郎『能久親王事蹟』明治二十八年十月二十六日
朝の體温三十八度、二 脈百十八至、夕の體温三十八度、零 脈百十九至呼吸二十九。唇乾き、舌潤ひ、面、胸、手背に粘汗を帶びさせ給ふ。龍腦、加斯篤里幾尼涅を上る。
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森林太郎『能久親王事蹟』明治二十八年十月二十七日
朝の體温三十八度、六 脈百二十至呼吸三十、夕の體温三十七度、六 脈百二十至呼吸三十。舌及四肢振顫せさせ給ふ。全身粘汗を帶びさせ給ふ。時時精~朦朧におはす。濁音及捻髪音左胸に及びぬ。前方を上り、龍腦の皮下注射をなしまゐらす。午後九時の體温三十七度、五 脈百三十至呼吸三十七。・・・・・
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森林太郎『能久親王事蹟』明治二十八年十月二十八日
午前三時三十分脈不正にして百三十五至。五時體温三十九度、六 脈百三十六至呼吸四十五。四肢厥冷して冷汗を流させ給ふ。人事を省せさせ給はず。龍腦の皮下注射、COGNAC(【傍】コニヤツク)酒の灌腸をなしまゐらす。七時十五分病革(【振假名】すみやか)になりて、幾ならぬに薨ぜさせ給ふ。
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