『親王・諸王略傳』富［富□］

□ 富□王

　五辻宮（二）

　「祥益庵主」（煕明親王の男子。久明親王の孫）に比定される。
　「富明王」と同一人であろう。

　『皇親系』五に、「後深草院天皇」の曾孫煕明親王（久明親王の男子である久良親王の男子とされる）以下の系譜が、
　　　熈明親王 ── 富□王 ── 成熈王
と擧げられ、「富□王」の注として、「爲花園院天皇猶子」とある。
　また、『皇親系』六には、「花園院天皇」の子「富□王」とあり、注に、「兵部卿五辻宮熈明親王子。爲天皇猶子。後落飾居筑紫、稱五辻宮」とある。これは、『看聞日記』永享四年【一四三二】八月廿八日條に基づいているが、筑紫に下向した「五辻宮」（「成熈」の父）と、花園院の猶子となった五辻宮とは、同一人であるとは考え難い。よって、花園院の猶子となった五辻宮、即ち「富□王」を、筑紫に下向したとすることには從うことができない。
　また、『大日本人名辞書』第五巻（講談社、復刻一九七四年八月。初版、明治十九年四月）一七頁「親王家系譜」における「五辻宮」の系には、久明親王の子の熈明親王以下が、
　　　熈明親王 ── 富□王 ── 成熈王
と擧げられている。
　また、『雲上御系譜』皇胤篇は、編者が「□」を「國」の略字體と誤解したものとおぼしく、「富國王」と作す。
　なお、諱が「富□」であった人物は、『天龍寺重書目録』乙に見える「前鎌倉將軍家式部卿宮御孫子五辻親王家（御發體以後自被號祥益庵主）」「前鎌倉將軍家式[部]卿宮孫子五辻親王家、自號祥益庵主」であり、親王であった可能性がある。
　「祥益」を見よ。

次頁「普［普光］」へ

『親王・諸王略傳』目次「ふ」へ

『親王・諸王略傳』の冒頭へ

『日本の親王・諸王』の目次へ

公開日時： 2008.03.29.