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日本における女流SF作家の第一世代。
筆名「南部ふう」のち「美苑ふう(びえん ふう)」
SF同人誌『宇宙塵』の初期同人で、「セミプロ作家」として活躍。
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「美苑ふう」の筆名は、第一次インドシナ戰爭の激戰地、ディエンビエンフー(奠邊府 Điện Biên Phủ)に因む。
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映畫の試寫會で映畫館内で『SFマガジン』誌を讀んでいたところを、日本のSF第一世代作家である豊田有恒と平井和正に聲をかけられ、彼らの紹介で『宇宙塵』誌に參加した。
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豊田有恒『あなたもSF作家になれるわけではない』徳間書店、一九七九年十一月。再版(徳間文庫)、一九八六年九月
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伴名練「戦後初期日本SF・女性小説家たちの足跡【第二回】光波耀子、安岡由紀子、美苑ふう――『宇宙塵』の熱き時代(後篇)」 110〜111頁
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SF作家としての才能は認められていたが、型破りの言動により、『宇宙塵』誌同人から辟易されることがあった。
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豊田有恒『あなたもSF作家になれるわけではない』徳間書店、一九七九年十一月。再版(徳間文庫)、一九八六年九月
その女性(特に名を秘す)は、SF作家としての才能は、ありました。しかし、SF仲間のあいだでの評価は、かならずしも芳しいものではありませんでした。
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豊田有恒『日本アニメ誕生』勉誠出版、二〇二〇年八月
型破りな人で、ユニークな言動から、SF、アニメファンの世界では、有名人だった。実は彼女、朝香宮家という皇族として生まれたため、周囲に気配りしないため、誤解を招きやすいのだが、きわめて純粋な人だった。つまり、お姫さま育ちだったので、周りを気にしないのである。
そのため、ぼくは、変わった人をナンパして連れてきたと、SF同人誌〈宇宙塵〉の仲間から文句を言われたこともある。
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巽孝之「「王妃よりはサイボーグになりたい」――美苑ふう追悼――」
一部ではトラブルメーカーとさえ囁かれた彼女ではあったが、別の方面では、わたしを含め、その創作中心に「好印象しかない」人々も多い。・・・・・
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伴名練「戦後初期日本SF・女性小説家たちの足跡【第二回】光波耀子、安岡由紀子、美苑ふう――『宇宙塵』の熱き時代(後篇)」 112、116頁
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代表作「鳥蛇幻想譜」は、石川喬司、柴野拓美 編『日本SF・原点への招待 「宇宙塵」傑作選』U(講談社、一九七七年五月)に收録され、巽孝之に「伝奇ロマンの先駆とも言える傑作」と高く評價されている。
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巽孝之「「王妃よりはサイボーグになりたい」――美苑ふう追悼――」
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長澤唯史「日本SF史再構築に向けて――その現状と課題についての考察E」 SF Prologue Wave, 2022年8月3日
https://prologuewave.club/archives/9437
『SFマガジン』で伴名練による連載がはじまり、また橋本輝幸も日本女性SFについてのコラムを発表すると予告している。この原稿を執筆中の2022年5月の段階で、伴名の連載は光波耀子、安岡由紀子、美苑ふうなど、『宇宙塵』の初期同人の女性作家に触れ、経歴と作品について詳細なデータを提供してくれている。いずれも『日本SF・原点への招待 「宇宙塵」傑作選』(T・U)に作品が収録されているが、ありきたりのSF的ガジェットやアイデアに依存しない独自の作品世界を築き上げた、オリジナリティあふれる作家たちばかりだ。安岡のファンタジーとホラーにギリシャ神話をリミックスした斬新な作風の「ママ」や、アステカ神話を現代的想像力で荘厳なファンタジーに再生させた美苑の「鳥蛇幻想譜」など、今読んでもその完成度には驚くほかない。その作品世界や活動の全体像については、これからさらに掘り下げと分析が待たれる。
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博士課程で日本SFを研究 - シカゴ大学のブライアン・ホワイトさんの場合|Rikka Zine|note
https://note.com/rikkazine/n/n7b969a279c00
個人的には、美苑ふうにはかなり興味を抱いています。元皇族で、筆名をベトナム戦争のディエンビエンフーの戦いから取ったらしいという(笑)すごく興味をそそる逸話の持ち主です。彼女に関して見つけられたリソースはすべて読みました。だいたい巽孝之先生にいただいたものです。その中で私が興奮したのは、写真やコンベンションレポートのほとんどにおいて、女性の参加も確認できたことです。「いた!」って。男性の大群の中にも女性は存在していたのです。SFコミュニティは完全に男子校状態で、男による男のための小説が集まっていたことはまちがいありません。私は、これは福島正美が推進したSFが知的であることを強調したムーヴメントと関係しているのではないかと思っています。言うまでもなく不幸なことでした。
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『宇宙塵』誌 掲載作品
01 |
南部ふう「最後の森」(『宇宙塵』No.70、一九六三年八月)
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02 |
南部ふう「春になったら……」(『宇宙塵』No.74、一九六三年十二月)
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03 |
南部ふう「マーヤイド」(『宇宙塵』No.107、一九六六年十一月)
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04 |
美苑ふう「ジェロニモ異聞」(『宇宙塵』No.113、一九六七年六月)
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05 |
美苑ふう「リング幻想譜」(『宇宙塵』No.120、一九六八年二月)
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06 |
美苑ふう「鳥蛇幻想譜」(『宇宙塵』No.124、一九六八年六月)
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07 |
美苑ふう「アプコリミット物語」(『宇宙塵』No.130、一九六九年一月)
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08 |
美苑ふう「雨期」(上)(『宇宙塵』No.156、一九七一年七月)
美苑ふう「雨期」(下)(『宇宙塵』No.157、一九七一年八月)
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美苑ふう「ファン・ジャーナル」(21)〔随筆〕(『宇宙塵』No.166、一九七二年七月)
いったいぜんたいなんでSFなどというものに興味をしめしだしたのかわからない。しかし、母が文学少女タイプで父親がマッドサイエンティスト型だから遺伝的なものが多分にふくまれているに違いない。
小学校の時から銀河系の直径は何万光年で、地球に一番近い恒星はアルファ・ケンタウリなどとやっていた。むろん火星人の存在を信じていた。
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09 |
美苑ふう「聖母マリアの宝石たち」(『宇宙塵』No.173、1973年 No.2、一九七三年十二月)
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10 |
美苑ふう「星の墓守り」(『宇宙塵』No.184、1983年 No.2、一九八三年)
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宇宙塵 編『塵も積もれば 宇宙塵40年史』東京、出版芸術社、平成九年十一月
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伴名練「戦後初期日本SF・女性小説家たちの足跡【第二回】光波耀子、安岡由紀子、美苑ふう――『宇宙塵』の熱き時代(後篇)」
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第10回『宇宙塵』掲載作品コンテスト(第109号〜160号)で、作品「雨期」が第11位に入る。
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宇宙塵 編『塵も積もれば 宇宙塵40年史』(出版芸術社、平成九年十一月)193頁
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第12回『宇宙塵』掲載作品コンテスト(第172号〜181号。對象作品三七篇、總票數三三三票、五篇以内連記)で、作品「聖母マリアの宝石たち」が第10位に入る。
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柴野拓美「解説(その1)」『破局のおすすめ 新「宇宙塵」SF傑作選T』(河出文庫)(河出書房新社、昭和六十二年十二月)
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宇宙塵 編『塵も積もれば 宇宙塵40年史』(出版芸術社、平成九年十一月)194頁
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同人誌『宇宙気流』 掲載作品
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南部ふう「清夜」〔SF小説〕(『宇宙気流』第6号、一九六三年三月)
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南部ふう「光瀬龍を理解する三つのカギ ― 未来史年表にそえて」〔評論〕(『宇宙気流』第46号、一九六七年一−二月)
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美苑ふう「サイボーグ随想記」〔随筆〕(『宇宙気流』第53号、一九六八年一月)
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美苑ふう「雨中気流年表 付録資料 (1968) (サイボーグ随想記)」〔随筆〕(『宇宙気流』第92号、二〇一九年七月)
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ほか
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森田裕「宇宙気流のページ」
http://neelsebub.com/Ukiryu/ukiryu.html
「執筆者一覧」
http://neelsebub.com/Ukiryu/shippitsusha.php?s=penfuri
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美苑ふう企画・編集『光瀬龍 未来史年表』(『SF PARADOX 6』Vol.3, No.1 付録。昭和43年8月)
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SFファン同人誌『サイレント・スター』 掲載作品
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「異聞・シッティングブル伝」『サイレント・スター』第18〜23号、一九六八年
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「終わりの始まり」『サイレント・スター』第24号、一九六九年
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伴名練「戦後初期日本SF・女性小説家たちの足跡【第二回】光波耀子、安岡由紀子、美苑ふう――『宇宙塵』の熱き時代(後篇)」
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瀬戸内地方のSFファン同人誌『イマジニア』 掲載作品
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「ある恋の物語」『イマジニア』第4号、一九六八年
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「沼」『イマジニア』第6号、一九六九年
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伴名練「戦後初期日本SF・女性小説家たちの足跡【第二回】光波耀子、安岡由紀子、美苑ふう――『宇宙塵』の熱き時代(後篇)」
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SFファン同人誌『小惑星』 掲載作品
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「神話随想」『小惑星』第4号、一九六九年
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伴名練「戦後初期日本SF・女性小説家たちの足跡【第二回】光波耀子、安岡由紀子、美苑ふう――『宇宙塵』の熱き時代(後篇)」
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九州のSFファン同人誌『てんたくるず』 掲載作品
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「地獄のアナスタシア」『てんたくるず』第59号、一九六九年
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伴名練「戦後初期日本SF・女性小説家たちの足跡【第二回】光波耀子、安岡由紀子、美苑ふう――『宇宙塵』の熱き時代(後篇)」
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中學生 山根聰彦を代表とする「美苑ふう親衛隊」によるファン同人誌『フウ圧』が出されたという(一九六九年四月以前)。
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伴名練「戦後初期日本SF・女性小説家たちの足跡【第二回】光波耀子、安岡由紀子、美苑ふう――『宇宙塵』の熱き時代(後篇)」 116頁
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