左京人
父は、延暦二十四年（八〇一）二月十五日に淸海眞人を賜姓された駿河王・廣益王ら十六人のうちの一人であると考えられる。
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八一五年（弘仁六年）、攝津國において河上の漁師の家に誕生。
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攝津國講師藥圓に見出され、弟子となる。
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承和元年（八三四年）、年分試に拔群の成績を收め、律師中繼より法相宗義を授けられる。時に二十歳。
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承和二年（八三五）、具足戒を受け、眞如（もと高岳親王）より眞言法を傳授される。
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貞觀十一年（八六九）、大和國講師となる。
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貞觀十六年（八七四）、維摩會講師を勤める。
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元慶六年（八八二）、權律師となる。
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元慶七年（八八三）、律師となる。
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仁和二年（八八六）七月二十二日、卒去。時に七十二歳。
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『日本三代實録』仁和二年七月廿二日己亥
律師法橋上人位隆海卒。隆海「俗者」【當衍】俗姓淸海眞人氏。左京人也。生於攝津國。家在河上、漁捕爲業。隆海、年甫數歳、從漁父出遊水上。當國講師藥圓見而異之、共載而歸。久之、藥圓付屬律師願曉、令受三論宗義。年廿、奉年分試。是時、監試法俗、相議令諸宗學徒〓相難問、取其拔萃者爲得第。隆海、詞致淸遠、衆不敢抗。監試官評議、擢爲甲科。律師中繼感其神悟、授以法相宗義。承和二年、受具足戒、詣平城第三皇子法名眞如、承受眞言法。貞觀十一年、爲大和國講師。十六年、爲維摩會講師。諸宗僧綱碩學、論難鋒起。隆海、隨方辨折、咸出問表。元慶六年、爲權律師。明年、改權爲眞。隆海、患風疾、心神疲苶。告門弟子曰。「就命時至、當修往生之業」。盥手、漱口、面向西方、觀念阿弥陀佛、毎修十念、誦龍樹菩薩及羅什三藏彌陀讚。至于命終、其聲不絶、又毎日沐浴。如此三日。更披閲無量壽經、誦其要文。命弟子掃地展席、回坐其上。至於夜分、安坐氣絶。弟子等令北首臥。明朝見右手結無量壽如來印。積薪焚身、火滅形砕、唯印不爛。卒時年七十二。隆海、綜覈經論章疏文義、撰『二諦義』一卷、『方言義』一卷、『四諦義』二卷、『二智義』二卷、『二空比量義』二卷、『回明九句義』二卷。
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佐伯有清『聖宝』（吉川弘文館、平成三年（一九九一）六月）78頁
･････ 隆海は、俗姓は清海真人(きようみのまひと)で摂津の国に生まれ、この国の講師(こうじ)薬円(やくえん)に見いだされ、後に聖宝の師である願暁のもとで三論の宗義を学び、また中継(ちゆうけい)に法相(ほつそう)の宗義を受け、さらに平城天皇の第三皇子真如(しんによ)から真言の法を授けられ、聡明な人物として聞こえていた。貞観十一年（八六九）、すなわち聖宝が維摩会の竪義をつとめた年に大和の国の講師に任ぜられ、同十六年には維摩会の講師となった。元慶六年（八八二）には権律師(ごんりつし)、翌年には律師、そして仁和二年（八八六）七月二十二日、薪を積み身を焼いて死んだという。著書には『二空比量義』のほか、『二諦義(にたいぎ)』一卷、『方言義(ほうごんぎ)』一卷、『四諦義(したいぎ)』二卷、『二智義(にちぎ)』二卷、『因明九句義(いんみようくくぎ)』二卷などがあった（『三代実録』仁和二年七月二十二日己亥条参照）。後世、隆海は往生者(おうじようしや)のひとりとして名を遺した（『日本往生極楽記』『今昔物語集』など参照）。聖宝は同門の法兄である隆海を日ごろから畏敬していたであろう。
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