広井女王


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『 親 王 ・ 諸 王 略 傳 』
  
[廣井A]

フレームなし

工事中

廣井女王
 
【官位】
 尚侍
 從三位
 
【出自】
 天武天皇五世。
 長親王の玄孫。
長田王の曾孫。廣川王の孫。雄河王の女子。
『日本三代實録』貞觀元年十月廿三日乙巳
『尊卑分脈』高階真人、「長親王」の子「栗栖王」の子「長田王」の子孫
 從四上      從五上
長田王──┬廣川王──────────┐
     │             │
     │從五下           │
     └淨原王────【略】   │
                   │
┌──────────────────┘
│       典侍
從五上     尚侍 從三位
└雄河王────廣井女王
        貞觀元十廿三薨八十餘歳
『尊卑分脈』が長田王を栗栖王の子と作すのは誤り。
 
【經歴】
七八〇年(寳龜十一年)より若干以前に誕生。
『日本三代實録』貞觀元年十月廿三日乙巳條より逆算。
天長八年(八三一)、從五位下に敍され、尚膳に任じられる。
『日本三代實録』貞觀元年十月廿三日乙巳
嘉祥三年(八五〇)七月二十六日、從四位上に敍される。
『日本文コ天皇實録』嘉祥三年七月辛丑
[授]无位望子女王從四位下。從四位下廣井女王從四位上。從四位上當麻眞人浦虫正四位下。
嘉祥三年(八五〇)、權典侍に任じられる。
『日本三代實録』貞觀元年十月廿三日乙巳
仁壽四年(八五四)正月八日、從三位に敍される。
『日本文コ天皇實録』齊衡元年正月癸巳
從四位上廣井女王、正四位下當麻眞人浦虫等並授從三位。
天安元年(八五七)十二月一日、典侍から尚侍に昇任。
『日本文コ天皇實録』天安元年十二月甲子朔
典侍從三位廣井女王、從三位當麻眞人浦虫爲尚侍「也【恐衍】」。
貞觀元年(八五九)十月二十三日、薨逝。時に尚侍從三位。八十餘歳。
『日本三代實録』貞觀元年十月廿三日乙巳
尚侍從三位廣井女王薨。廣井者二品長親王之後也。曾祖二世從四位上長田王。祖從五位上廣川王。父從五位上雄河王。廣井、天長八年授從五位下、任尚膳。嘉祥三年授從四位上、任權典侍。仁壽四年授從三位。天安三年【ママ】轉典侍。薨時[年]八十有餘。廣井、少修コ操、擧動有禮。以能歌見稱。特善催馬樂歌。諸大夫及少年「及【紀略無。當衍】」好事者多就而習之焉。至于殂沒、時人悼之。
 
工事中 【逸事等】
歌唱に堪能で、特に催馬樂(さいばら)歌(雅樂の歌物(うたいもの)である催馬樂の原初的な歌謡と推定される)の名人であり、多くの好事者たちが廣井女王から催馬樂を習った。
『日本三代實録』貞觀元年十月廿三日乙巳
廣井女王は和琴を嵯峨天皇から學び、仁明天皇と左大臣源朝臣信にヘえた。
『和琴血脈』(『群書類從』一九上(管絃部)卷第五百三十三)
∴嵯峨天皇──────廣井女王──────────┐
┌────────────────────────┘
仁明天皇────────────────────┐

└左大臣信
  母廣井女王【ママ】。嵯峨御子。
玉上琢彌編、山本利達・石田穣二校訂『紫明抄・河海抄』(角川書店、一九六八年六月)467頁上
嘉祥元年八月に創建された安祥寺に、佛像(地蔵菩薩像)、聖ヘ(金字法花經、本願藥師經、隨願藥師經)、荘嚴供養具を施入した。時に侍從從三位。
東寺所藏文書『安祥寺伽藍縁起資財帳』
地藏菩薩等身像壹躯(綏色、安置下寺)尚侍從三位廣井女王願。
金字法花經一部八卷、本願藥師經四十九卷、隨願藥師經四十九卷、已上三行、尚侍從三位廣井女王願。
・・・・・
右二種、尚侍廣井女王奉納。
京都大学文学部日本史研究室編『安祥寺資財帳』(京都大学史料叢書17)思文閣出版、二〇一〇年七月
『平安遺文』第一卷 第一六四號文書
松田和晃「安祥寺資財帳について」(『日本歴史』第四四九号、一九八五年十月、二〇〜三一頁)
 
【詠歌】
志香須賀本『古今和歌集』第十六「哀傷」
諒闇の年、冷泉院の櫻を見てよめる   尚侍廣井女王
こころなき草木といへどあはれなり今年は咲かずともにかれなむ
『群書類從』一六(和歌部)卷第二百八十五『古今和歌集目録』
有他本無此本歌等。
・・・・・
第十六哀一首 廣井女王
・・・・・
右古今和歌集目録依無類本雖有不審不能校合。
・・・・・
第十六哀傷三十四首内(無名五首之外他本哥一首廣井女王)
 ・・・・・
 
【文獻等】

佐藤忠彦「催馬楽の成立をめぐって 広井女王について一・二のこと」『国語国文研究』一八・一九号、北海道大学国語国文学会、1961年3月
永池健二「広井女王「催馬楽歌」存疑 催馬楽歌考序説(一) 」日本歌謡学会編『日本歌謡研究 現在と展望 日本歌謡学会創立三十周年記念論文集』(研究叢書147)和泉書院、一九九四年三月、一四三〜一六〇頁
藤原茂樹「和琴と催馬楽と ―御遊における源藤氏流および広井女王―」『藝文研究』九十五号、慶應義塾大学藝文学会 、二〇〇八年十二月、22〜47頁
佐藤浩司「雅楽の楽しみ方 ―特に謡物の催馬楽について」(第56回 平成19年12月8日)『天理大学公開講座』第5号 2007年度/2007年度、天理大学広報委員会、二〇一〇年三月、9〜11頁
https://www.tenri-u.ac.jp/lifelng/q3tncs00001fu1ov-att/q3tncs00001fu1s5.pdf
上原真人編『皇太后の山寺 山科安祥寺の創建と古代山林寺院』京都、柳原出版、二〇〇七年三月


 
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更新日時:2023.09.11.
公開日時:2021.02.13.

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