葛原親王


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『 親 王 ・ 諸 王 略 傳 』
　　葛 [葛原]

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□ 葛原親王
　
※ 『蔗軒日録』文明十八年四月廿七日
カツラ原ノ親王ノ后代ハ、マサ門也。太平記ニ出【校訂者注「書カ」】之。マサ門八ヶ國打取、称平親王。･････
　
　武門平氏、堂上平氏の祖。
　
【出自】
　桓武天皇の男子。
　
【母】
　多治比眞人眞宗
　夫人。正三位。
　多治比眞人長野の女子。
　七六九年（神護景雲三年）生。
　葛原親王、佐味親王、賀陽親王、大德親王、安濃内親王、因幡内親王の母。
　弘仁十四年（八二三）六月十一日薨逝。五十五歳。贈正二位。
◎ 『日本紀略』弘仁十四年六月甲午
多治比眞宗薨。參議從三位長野之女也。初桓武天皇入之掖庭、生六親王云々。贈正二位。時年五十五。
　
【經歴】
● 七八六（延暦五年）誕生。
● 延暦十七年（七九八）四月十七日、加冠。
◎ 『日本紀略』延暦十七年四月丁卯
諱（淳和太上天皇）及葛原親王於殿上冠。
● 延暦二十二年（八〇三）正月、四品に敍される。
◎ 『日本文德天皇實録』仁壽三年六月癸亥
延暦廿二年正月叙四品。
● 延暦二十二年（八〇三）四月、治部卿となる。
◎ 『日本文德天皇實録』仁壽三年六月癸亥
ヽ【四】月爲治部卿。
● 延暦二十五年（八〇六）正月五日、度二人を賜わる。時に治部卿四品。
◎ 『日本後紀』大同元年正月庚午
賜大法師永忠度二人、僧最澄三人、治部卿四品葛原親王二人。
● 延暦二十五年（八〇六）五月九日、大藏卿となる。
◎ 『日本後紀』大同元年五月壬申
四品葛原親王爲大藏卿。
● 大同三年（八〇八）正月、彈正尹となる。
◎ 『日本文德天皇實録』仁壽三年六月癸亥
[大同]三年正月爲彈正尹。
● 大同四年（八〇九）四月二十四日、奉獻。時に彈正尹四品。
◎ 『類聚國史』卷第七十八「奉獻部」「獻物」大同四年四月己亥
◎ 『日本紀略』大同四年四月己亥
● 大同四年（八〇九）九月一日、四品より三品に敍される。
◎ 『類聚國史』卷第九十九「職官部」四「叙位」四、大同四年九月甲辰朔
四品葛原親王授三品。
◎ 『日本紀略』大同四年九月甲申朔
四品葛原親王授三品。
● 大同四年（八〇九）九月二十四日、奉獻。
◎ 『類聚國史』卷第七十八「奉獻部」「獻物」大同四年九月丁卯
● 弘仁元年（八一〇）九月、式部卿となる。
◎ 『日本文德天皇實録』仁壽三年六月癸亥
弘仁元年九月爲式部卿。
● 弘仁二年（八一一）十月五日、上野國利根郡長野牧を賜わる。
◎ 『日本後紀』弘仁二年十月丙寅
上野國利根郡長野牧賜三品葛原親王。
● 弘仁三年（八一二）正月十二日、大宰帥を兼ねる。時に式部卿三品。
◎ 『日本後紀』弘仁三年正月辛未
式部卿三品葛原親王爲兼大宰帥。
● 弘仁七年（八一六）正月七日、三品より二品に昇敍。
◎ 『類聚國史』卷第九十九「職官」四「叙位」四、弘仁七年正月癸酉
宴群臣。授三品葛原親王二品。從五位上直世王正五位下。從五位下高瀨王從五位上。正六位上巨倉王從五位下。
◎ 『日本紀略』弘仁七年正月癸酉
宴群臣。有授位事。授三品葛原親王二品。
● 弘仁十四年（八二三）九月二十八日、中務卿となり、大宰帥を兼ねる。
◎ 『日本紀略』弘仁十四年九月己卯
二品葛原親王爲中務卿、兼大宰帥。
● 弘仁十四年（八二三）九月二十九日／十月、彈正尹となる。大宰帥はもとの如し。
◎ 『類聚國史』卷第八「神祇部」八「大嘗會」弘仁十四年九月庚辰
◎ 『日本紀略』弘仁十四年九月庚辰
二品葛原親王爲彈正尹、大宰帥如故。
◎ 『日本文德天皇實録』仁壽三年六月癸亥
[弘仁]十四年十月更爲彈正尹。
※ 『稿本桓武天皇實録』「皇子葛原親王」三二〇頁〔按〕
彈正尹ト爲ルコト、文德實録ニ十月トアレドモ、日本紀略ノ記事アルニヨリ今姑ク之ニ從フ、然レドモ九月庚辰ハ二十八日己卯、中務卿ト爲ルノ翌日ニシテ稍疑フベシ、
● 弘仁十四年（八二三）十月二十一日、大藏十四間長殿の火災に出動し、消火活動に当たる。
◎ 『類聚國史』卷第百七十三「災異部」七「火」弘仁十四年十月辛丑
亥尅、失火大藏十四間長殿。彈正尹葛原親王、右衛門督紀朝臣百繼、左大弁直世王、右大弁伴宿禰國道等到着、令撲。左右衛馳東西京、呼告集衆。千【火】勢高屬【己本勵、大本厲】、不能制止。盛炎飛揚、迸落無數。勇士卅許人登北長殿、濕幕撲之。是夜、大臣已下侍内裏、諸門皆禁出入。明朝擇拔有功、奏聞賜綿。
◎ 『日本紀略』弘仁十四年十月辛丑
● 天長二年（八二五）三月廿四日、子女の平朝臣賜姓を願い上表するが、許されず。
◎ 『日本紀略』天長二年三月丁卯
二品行彈正尹葛原親王上表、臣之男女一皆被賜姓平朝臣。不許。
● 天長二年（八二五）七月六日、子息の賜姓を願い上表し、允許される。時に二品行彈正尹兼大宰帥。
◎ 『日本紀略』天長二年七月丁未
二品行彈正尹兼大宰帥葛原親王上表、割愛子息庶捨王號。許之。
● 天長七年（八三〇）正月、常陸太守を兼ねる。
◎ 『日本文德天皇實録』仁壽三年六月癸亥
天長七年正月兼爲常陸太守。
● 天長七年（八三〇）六月四日／八月、式部卿となる。
◎ 『日本紀略』天長七年（八三〇）六月丁未
任官。二品葛原親王爲式部卿。
◎ 『日本文德天皇實録』仁壽三年六月癸亥
[天長七年]八月更爲式部卿。
※ 『稿本桓武天皇實録』「皇子葛原親王」三二一頁〔按〕
日本紀略ニ六月甲辰朔丁未トアレドモ、三正綜覽ニヨレバ朔日ノ干支ハ癸卯ナリ、今姑ク紀略ニ從フ、文德實録此條ヲ八月ニ掲ゲタレドモ、之亦紀略ニ從フ、
● 天長八年（八三一）正月四日、二品より一品に敍される。
◎ 『類聚國史』卷第九十九「職官部」四「叙位」四、天長八年正月癸卯
天皇【淳和天皇】御豊樂院。授二品葛原親王一品。
● 承和二年（八三五）四月二日、甲斐國巨麻郡馬相野の空閑地五百町を賜わる。
◎ 『續日本後紀』承和二年四月丙子
甲斐國巨麻郡馬相野空閑地五百町賜一品式部卿葛原親王。
● 承和五年（八三八）正月十三日、上野太守を兼ねる。式部卿はもとの如し。
◎ 『續日本後紀』承和五年正月壬申
一品葛原親王爲兼上野太守、式部卿如故。
● 承和八年（八四一）六月一日、特別に御衣一襲を賜わる。
◎ 『續日本後紀』承和八年六月庚子朔
　天皇御紫宸殿、賜宴侍臣以上。一品葛原親王、右大臣正三位源朝臣常、殊賜御衣一襲。自外賜祿有差。
● 承和十年（八四三）五月八日、子息 平朝臣高棟を遣わして上表し、致仕を乞うが、許されず。
◎ 『續日本後紀』承和十年五月丙申
一品式部卿葛原親王遣男從三位大藏卿平朝臣高棟、詣朝堂、抗表曰。「倦禽知暮。自是反林之時。老馬傷羸。亦爲税駕之日。遠取諸物、近喩於身。鳥物之情、人亦不殊。臣才識空虚、駈馳駑怯、猥以瓊樹之葉花、銀潢之涓滴、出宗室之先、位次人臣上。誠當償德之期生死無終、記恩之處魂魄有遺【譴】。豈取【敢】欽斯獨善、尚彼高冲。然而年随日積、病与老和、一日伏枕、四支委癈、漸以過日、弥覺衰耗。縱有殘喘、知非全身。夫吏部者、人物之衡錘、吏職之淸要、塡案盈几、何須暫曠。伏願。還於天工、以利王職。臣聞。天道禍滿、人道福謙。儻因一退、時得再生、則庶蹔留泡露、重瞻闕庭」。不許之。
● 承和十一年（八四四）正月、ふたたび常陸太守を兼ねる。
◎ 『日本文德天皇實録』仁壽三年六月癸亥
[承和]十一年正月兼復爲常陸太守。
● 嘉祥三年（八五〇）五月十七日、大宰帥となる。
◎ 『日本文德天皇實録』嘉祥三年五月甲午
一品葛原親王爲大宰帥。
● 仁壽三年（八五三）六月四日、薨逝。時に六十八歳。
◎ 『日本文德天皇實録』仁壽三年六月癸亥
一品大宰帥葛原親王薨。親王者　桓武天皇之第三子。　嵯峨太上天皇之兄也。母、夫人多治氏【多治眞人眞宗】。延暦廿二年正月叙四品。ヽ【四】月爲治部卿。大同元年五月爲大藏卿。三年正月爲彈正尹。四年九月叙三品。弘仁元年九月爲式部卿。三年正月兼爲大宰帥。七年正月叙二品。十四年十月更爲彈正尹。天長七年正月兼爲常陸太守。八月更爲式部卿。八年正月叙一品。承和五年正月兼爲上野太守。十一年正月兼復爲常陸太守。嘉祥三年遷[復]爲大宰帥。親王少而惠了。歴覽史傳、常以古今成敗爲戒。爲人恭倹、不傲於物。久在式部、諳職務、凡在舊典、莫不達練、擧朝重之。勅賜輦車入宮、礼儀異諸親王。薨時年六十八。朝庭監喪、葬儀如常、王家推謝、專從倹薄、不敢違遺令也。
　
【子女】
□ 高棟王 のち平朝臣高棟
□ 善棟王 のち平朝臣善棟
○ ゝゝ女王（のち平朝臣可賀子か）
□ 高見王
※ 平朝臣春香も葛原親王の男子と推定される。
　
【家令】
　秦忌寸福代
● 承和十五年（八四八）正月十三日、土佐大目を兼ねる。一品葛原親王家令はもとの如し。
◎ 『續日本後紀』嘉祥元年正月甲戌
[以]外從五位下秦忌寸福代爲兼土左大目。一品葛原親王家令如故。
　
【逸事等】
● 年少より聰明で、史傳を歴覽し、常に古今の成敗を戒めとしていた。人となりは恭倹で、傲り高ぶることがなかった。久しく式部卿の職にあり、職務を諳んじ、あらゆる舊典に熟達しており、朝廷はことごとく親王を重んじた。勅により輦車入宮を允許され、親王への礼儀は他の諸親王とは異なり、高く待遇されていた。
◎ 『日本文德天皇實録』仁壽三年六月癸亥
● 天長五年（八二八）、有雄王（のちの淸原眞人有雄）を正親佑に推擧した。
◎ 『日本文德天皇實録』天安元年十二月戊子
散位從四位上淸原眞人有雄卒。有雄者天渟中原瀛眞人天皇五代之孫也。父大監物從五位下貞代王。有雄頗有風操、尤習政理。天長五年式部卿葛原親王推擧爲正親佑。･････
　
【備考】
●
　
【文獻】
● 『稿本桓武天皇實録』三一八～三二三頁「皇子葛原親王」
●

　
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公開日時：2022.02.13.
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