| ● |
九一四（延喜十四年）生。
| ※ |
『勅撰作者部類』、村上本『本朝皇胤紹運録』の卒年より逆算。なお、村上本『本朝皇胤紹運録』貞純親王の子「經基王」右袖書に「延喜十三癸酉」とあるのは生年であると考えられるが、左袖書に「天德二戊午十一廿四薨【ﾏﾏ】／四十五歳」とあるのとは合致しない。
|
| ※ |
『尊卑分脈』によると、天德五年（九六一）に四十五歳で卒去したとされ、逆算すると九一七年（延喜十七年）生となる。
|
| ※ |
 子の源朝臣滿仲を延喜十二年（九一二）生とするのは誤りであろう。
|
|
| ● |
源朝臣を賜姓されて臣籍降下した後、二世源氏として從五位下に敍されたと考えられる。
| ※ |
『尊卑分脈』貞觀「經基王」袖書に「天德五年六月十五日、始而賜源朝臣姓」とあるのは誤り。
|
|
| ● |
武藏介に任じられ、武藏國に下向し、承平八年／天慶元年（九三八）二月、先例を無視して、武藏守が着任していないにもかかわらず、武藏權守の興世王と共に武藏國内において未納税・延滯税を強引に取り立て、足立郡司の武藏武芝との間に紛爭を生じた。
| ◎ |
『將門記』
･････ 以去承平八年春二月中、武藏守興世王、介源經基、與足立郡司判官代武藏武芝共、各爭不治之由、･････
|
|
|
| ● |
天慶二年（九三九）春、平朝臣將門が、興世王・源經基と武藏武芝との間の爭いを仲裁しようとした。しかし、源經基は、單なる誤解から京都へ逃げ歸り、天慶二年（九三九）三月三日、將門の「謀叛」を太政官に訴え出た。
| ◎ |
『將門記』
[將門]即率自分之兵仗、就武芝當野。武芝申云。『件權守【興世王】并介【源經基】等、一向整兵革、皆率妻子、登於比企郡狹服山』者。將門・武芝相共指府發向。于時、權守興世王、先立而出於府衙。介經基未離山陰。將門且興世王與武芝、令和此事之間、各傾數坏、迭披榮花。而間、武芝之後陣等、无故而圍彼經基之營所。介經基、未練兵道、驚愕分散云、忽聞於府下。于時、將門鎭濫惡之本意、既以相違。興世王留於國衙、將門等歸於本郷。爰經基所懷者、權守【興世王】與將門、被催郡司武芝、抱擬誅經基之疑、即乍含深恨、遁上京都。仍爲報興世王將門等之會稽、巧虚言於心中、奏謀叛之由於太政官。
|
|
| ◎ |
『貞信公記抄』天慶二年二月十二日
大納言【平伊望】來。便示明日 ･････ 可問召將門【平】使事。
|
|
| ◎ |
『貞信公記抄』天慶二年三月三日
|
|
| ● |
經基の告訴に對して、平將門の「私君」である太政大臣藤原忠平は、謀叛の實否を問う天慶二年（九三九）三月二十五日付の御敎書を將門に下した。御敎書は三月二十八日に將門のもとに到來した。將門は、常陸・下總・下毛野・武藏・上毛野五箇國の解文と共に、五月二日を以て、謀叛無實を言上した。
| ◎ |
『將門記』
|
| ※ |
天慶二年（九三九）五月十五日・十六日、六月十六日、東國諸國の國司の任官が行われたが、これは將門の「謀叛」に備えたものというよりも、東國の混乱に對應したものと考えるべきであろう。
|
|
| ● |
天慶二年（九三九）六月七日、經基の告訴により陣定が開かれ、問密告使が定められた。
| ◎ |
『貞信公記抄』天慶二年六月七日
呼兼忠朝臣【源】、告示左閤【藤原仲平】、今日可定問密告使事、亦可随例不状、參職曹司 令候陣。公卿定問密告使。
|
|
| ◎ |
『本朝世紀』天慶二年六月七日丁丑
･････ 仰云。依密告并群賊事遣推問追捕使例勘申者。即昌泰二年・延喜元年四月等例勘申〓。即太政大臣參式御曹司任武藏國密告使。長官右衞門權佐源朝臣俊、判官主典等也。近曾武藏介源經基言上申云。武藏權守興世王并平將門有謀反事者。上卿於陣淸書召名、召式部給之。
|
|
| ※ |
なお、問密告使（推問使）たちは東國への出發を度々延期し、結局、彼らの出發以前に將門が叛亂を起したため、遂に發向することなく終った。よって、天慶三年正月九日、彼らは解官された。
|
|
| ● |
天慶二年（九三九）六月九日、經基の告訴が受理され、規定に從って、訴人である經基は左衞門府に拘禁された。
| ◎ |
『貞信公記抄』天慶二年六月九日
大納言【平伊望】來令見可禁告人忠明勘文、即示可令禁經基左衞門府事、諸興【小野】・最茂【橘】等、可爲押領使。但以五位充例可勘。亦推問使官符可令早仰事。
|
|
| ※ |
川尻秋生『平将門の乱』86～87頁に、
源経基の禁固 もう一つ、この時期の政府の対応の変化を知ることのできる重要な史料がある。天慶二年六月九日に、、経基を左衛門府に禁固すべきことを、忠平が大納言平伊望に指示していることだ（『貞信公記』）。従来、この史料については、経基の告発に誣告（虚偽の罪で訴えたこと）の疑いがあったために、経基が禁固されたと考えられてきた。しかし、このように考えると、問密告使が任命されて以降、次々と軍事的政策が決定されたことと矛盾してしまう。
実は、この史料はまったく逆に解釈しなければならないのだ。律令制下の裁判では、告訴が取り上げられると同時に、告人（告訴した人物）も拘禁されたのである（獄令告密条）。したがって、この史料は、従来とはまったく逆に、経基の告訴が正式に取り上げられたことを意味する非常に重要なものである。このように解釈すれば、二十八日に経基の告発状が、弁官に下されたこと（『貞信公記』）も素直に理解することができる。
|
|
|
| ● |
天慶二年（九三九）六月二十八日、藤原忠平は、經基の告状を辨に下した。
|
| ● |
結局、經基の誣告が明らかになったと思われる。そして、經基は官位を除かれたと推測される。
|
| ● |
ところが、平將門が同年冬に反亂を起こしたため、誣告者經基は、結果的に將門の亂の第一通報者となり、經基の密告は正當なものと評價され、誣告罪を免じられたと推測される。よって、經基は、天慶三年（九四〇）正月九日、從五位下に敍された。
| ◎ |
『貞信公記抄』天慶三年正月九日
俊【源】除官位。良臣【高階】・廣遠【阿蘇】解官。經基叙從五位下。又、於保月矢叙外從五位下。
|
|
| ◎ |
『日本紀略』天慶三年正月九日乙亥
以武藏介源經基敍從五位下。依申東國凶賊平將門謀反之由也。解却右衞門權佐源俊・左衞門尉高階良臣・勘解由主典阿蘇廣遠等、已上三人爲推問東國使、〓申障不發向之故也。
|
|
| ◎ |
『將門記』
今介【武藏介】恆基【經基】也、始雖奏虚言、終依實事、敍從五位下。
|
|
| ※ |
『日本紀略』・『將門記』には、經基が從五位下に敍されたのは、平將門の亂を告訴したことへの勸賞であるように述べられているが、この敍位は、經基が本位從五位下を復された、と解すべきものであろう。
|
|
| ● |
天慶三年（九四〇）二月八日、藤原朝臣忠文を大將軍とする平將門追討軍の副將軍の一人となる。出發するが、藤原朝臣秀郷、平朝臣貞盛らによって平將門の亂が鎭定されたため、戰うことなくして歸京。
| ◎ |
『扶桑略記』天慶三年二月八日甲辰
々【辰】刻、主上【朱雀天皇】出御南殿、賜征夷【ﾏﾏ】大將軍右衞門督藤原忠文節刀、下遣於坂東國。即以參議修理大夫兼右衞門督藤原忠文爲大將軍。世謂宇治民部卿是也。刑部大輔藤原忠舒・右京亮藤原國幹・大監物平淸基・散位源就國・同經基等、爲副將軍。并下總權少掾平公連・藤原遠方等同下遣也。
|
|
| ◎ |
『帝王編年記』天慶三年二月八日甲辰
|
|
| ● |
天慶三年（九四〇）三月九日、平將門の亂を告訴した賞として大宰權少貳に補される。
| ◎ |
『扶桑略記』天慶三年三月九日乙亥
即賞藤原秀郷、敍從四位下、兼賜功田永傳子孫、更追兼任下野・武藏兩國守。又平貞盛敍從五位上任右馬助。又告人源經基敍從五位下、兼補大宰少貳。
|
|
| ※ |
本條に「敍從五位下」とあるのは誤りか。現に、『日本紀略』天慶三年三月九日乙亥條には、「以下野掾藤原秀郷敍從四位下、以常陸掾平貞盛敍從五位上。並依討平將門之功也」とあるのみで、經基の敍位に關する記載は無い。
|
|
| ● |
天慶三年（九四〇）十一月二十九日、藤原純友の亂を追討するための追捕山陽南海凶賊使の次官となる。
| ◎ |
『扶桑略記』天慶三年十一月廿一日
純友追討記云。･････ 于時公家遣追捕使、以右近衞少將小野好古【大宰大貳】爲長官、以源經基【大宰權少貳】爲次官。
|
|
|
| ● |
天慶四年（九四一）九月六日、豐後國海部郡佐伯院に襲來した賊徒と戰い、賊首桑原生行らを捕え、賊徒を撃殺し、馬・船・絹・錦等を獲得。翌七日、合戰日記を副えて捕虜・獲得物を大宰府に送るために出発させた。經基の下文は同月十六日、大宰府に到來。經基は頻りに歸京を望み、八月十七・十八日に日向國で捕えられていた、藤原純友の次將 佐伯是基（是本）を連行して歸京。同年十一月二十九日、佐伯是基は左衞門府に入れられた。
| ◎ |
『本朝世記』天慶四年十一月廿九日乙酉
此日、西國賊首藤原純友之次將者佐伯是基、乍生將來左衞門府。但大宰府解文云。賊徒襲來管日向國、去八月十七八兩日合戰。官軍有利。討殺凶賊之中、生獲件是基。仍進上其身、如件。即仰檢非違使、下左獄所已了。又斬獲同賊首桑原生行首所副進也。同府解云。豊後國九月十三日解、同十六日到來偁。追討凶賊使權少貳源朝臣經基今日下文同日到來云。賊徒今月六日襲來當國海部郡佐伯院。爰始從申時、至于酉剋合戰之間、生獲件生行、并撃殺賊徒、及討取馬船絹錦戎具雜物之由。以同七日、相副合戰日記、進送大[宰]府已了。件生行、合戰之日、數處被疵、生獲之後、僅存其命。爰爲進府、令禁候[之]間、今月八日遂以死去。即斬其首、進送大[宰]府。國宜承知早速進官者。進上如件者。須件賊首着府之日、即以進上。而日向國合戰之日、【當有脱文】生行【桑原】、捕獲佐伯是基、爲進官。警固使權少貳源朝臣經基、身随歸之由、頻有申送。仍爲一處進官、暫所逗留也。今相加是基進上如件云々。
|
|
|
| ● |
天慶八年（九四五）五月十五日、正五位下に敍される。
| ◎ |
『勅撰作者部類』自帝王至庶人之部（『大日本史料』一ノ一〇、九三七頁）
經基王（五位。上野介。正四位上。鎭守府將軍・兵部少輔。貞純親王御子。天慶八年五月十五日、敍正五位下。天德二十一廿四卒。四十五）。
|
|
| ◎ |
『倭歌作者部類』二、五位「源經基」（『大日本史料』一ノ一〇、九三四頁）
四品貞純親王子。天暦【ﾏﾏ】八年五月十五敍正五[下]。
|
|
| ※ |
源經基の極位を正四位上とする史料があるが、經基は『倭歌作者部類』において「五位」に列されているので、五位が極位であると考えられる。
|
| ◎ |
『勅撰作者部類』自帝王至庶人之部「經基王」（『大日本史料』一ノ一〇、九三七頁）
五位。上野介。正四位上。鎭守府將軍。兵部少輔。貞純親王御子。天慶八年五月十五日敍正五位下。天德二十一廿四卒、四十五。
|
|
| ※ |
『勅撰作者部類』に「五位。上野介。正四位上」とあり、異なる位階が重複して記されているが、「五位」は原資料における記載に基づいたものであり、「正四位上」は他の資料に基づいた誤った記載と考えられる。
|
|
| ● |
天慶九年（九四六）、何處の國のものか判らない大船二隻が對馬嶋に來着したことを京に報告、同年十一月二十一日、在京の大宰大貳小野好古は、その經基の書信を藤原忠平に示し、その後、上奏。時に大宰權少弐。
| ◎ |
『貞信公記抄』天慶九年十一月廿一日
大貳【小野好古】來令見少貳經基【源】書。其書云。大船二來着對馬嶋云々。未知何國船云々。中使頭朝臣【平随時】來。好古朝臣參入、令奏經基書。爲之何云々。
|
|
|
| ● |
筑前守に任じられる。
| ◎ |
『今昔物語』十九「攝津守源滿仲出家語」第四
今昔、･････ 源ノ滿仲ト云フ人有ケリ。筑前守經基ト云ケル人ノ子也。･････
|
|
|
| ● |
上野介に任じられる。
| ◎ |
『倭歌作者部類』二、五位「源經基」（『大日本史料』一ノ一〇、九三四頁）
|
| ◎ |
『勅撰作者部類』自帝王至庶人之部「經基王」（『大日本史料』一ノ一〇、九三七頁）
|
|
| ● |
鎭守府將軍になったとされるが、史料的根據の點で、その實否は確定し難い。
| ◎ |
村上本『本朝皇胤紹運録』貞純親王の子「經基王」左袖書（稿本淸和天皇實録、五九一頁）
|
| ※ |
『尊卑分脈』貞觀「經基王」袖書
|
|
| ● |
天德二年（九五八）十一月二十四日、卒去。四十五歳。
| ◎ |
『勅撰作者部類』自帝王至庶人之部「經基王」（『大日本史料』一ノ一〇、九三七頁）
|
| ◎ |
村上本『本朝皇胤紹運録』貞純親王の子「經基王」左袖書（稿本淸和天皇實録、五九一頁）
母右大臣能有公女。
天德二戊午十一廿四薨【ﾏﾏ】。
四十五歳。
|
|
| ※ |
『尊卑分脈』貞觀「經基王」袖書に「天德五年 ･････ 同年辛酉十一月四日卒、四十五歳」とあり、應和元年（九六一）十一月四日の卒去とされるが、誤りであろう。
|
| ※ |
『稿本淸和天皇實録』「皇孫經基王」五九二頁の「按」に、
經基王、賜姓ノ年月明カナラズ、尚ホ其卒年諸説アリテ遽ニ定メ難シ、村上本本朝皇胤紹運録ハ天德二年薨四十五ト爲シ、尊卑分脈ハ應和元年卒四十五或ハ四十一ト爲ス、大日本史ハ應和元年卒四十五歳ヲ採レリ、然レバ父親王薨去ノ翌年ノ誕生ト爲リ、弟經生ノ尚ホ在ルヲ見レバ是レ又遽ニ同ジガタシ、按ヲ附シテ後考ニ俟ツ、又經基ノ後ナル賴信ノ石淸水八幡ニ捧ゲタル告文ニヨレバ、經基ノ父ヲ元平親王トシ、陽成天皇ニ出ヅトナスハ一異説タリ、今、参考トシテ附載ス、
|
|
|
| ● |
元祿十四年（一七〇一）五月二十七日、遍照心院の敷地内の「經基王社（六孫王社）」に祀られている「故鎭守府將軍源朝臣」即ち源經基に權現號が授けられる。
| ◎ |
『基煕公記』元祿十四年五月二十七日癸丑
今日、遍照心院六孫王權現號事、今日、兩傳奏下宣命於所司代方云々。猶可尋之。宣命續加右了。
【別紙】
天皇我詔旨良万止故鎭守府將軍源朝臣爾詔倍止勅命乎聞食止宣布。智名永無窮功久將種多利。憂國心淵乃古止深久忘身勞夙爾夜爾順終爾東夷平岐西戎治利英靈神止爲王宮西南乃幽宮爾迹乎垂、是以吉日良辰乎擇定氐權現爾崇給比治賜布。此状乎平介久聞食氐天皇朝廷乎寶位無動常磐堅磐爾夜守日守爾護幸給比氐海内靜謐爾國家平安爾武軍【ﾏﾏ】延長爾護憐賜倍止恐美恐美毛申賜者久止申。
元祿十四年五月廿七日
|
|
| ◎ |
『基量卿記』元祿十四年五月廿八日甲寅
經基王贈正一位宣下位記、武家傳奏亭給之。召寄遍照[心]院住僧遣之云々。武家申沙汰云々。
|
|
| ◎ |
『基長卿記』元祿十四年五月廿八日甲寅
又聞。（【傍注】廿七日也。東寺近隣號尼寺）遍照心院寺中經基王（號六孫王）社、依武家執奏賜神位（正一位歟）、權現號等云々。依之詔書於武家傳奏亭召寄彼僧侶被渡之由風聞。委細之義不知、可尋諸家輩、不及參向。是昨日巳刻歟。被渡詔書之由、或人所語也。
|
|
| ※ |
『稿本東山天皇實録』三〇六～三〇七頁
|
| ※ |
『基長卿記』元祿十四年五月廿八日甲寅條、『基量卿記』元祿十四年五月廿八日甲寅條には、「經基王」に正一位が贈位されたとされるが、『基煕公記』元祿十四年五月二十七日癸丑條に從う。
|
|
| ● |
元祿十四年（一七〇一）十一月十八日、正一位を贈位される。
| ◎ |
『元和日記』元祿十四年十一月十八日（『歴代殘闕日記』巻百十六）
|
|